改善コンサルタント 柿内幸夫 Website

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KZ法・チョコ案とは?

What's 「KZ Method」・「CHOKOAN」?

KZ法・チョコ案とは

What's 「KZ Method」・「CHOKOAN」?

経営は社長一人のトップダウンでできるものではありません。逆に従業員のボトムアップだけでできるものでもありません。私は経営とは社長と従業員の全員の参加で行うのがベストの経営結果を生み出すと考えています。 社長を筆頭に全員で目指す経営の方向性を共有し、全社の実態(問題点、可能性)を知り、それぞれの人にとって最適である部分最適カイゼンと全社で最適な全体最適カイゼンの両方を実行するのです。

しかしこの考えの実践には困難が伴います。社長は経営トップですから当然すべてのことを知っているべきですが、実際にはそうはいきません。部門間の情報の流れや実際の工場のオペレーション、あるいはお客さまへのモノの流れや在庫の持ち方といった経営で大切なことでも具体的なことは知らないことが多いかもしれません。一方担当者は自分の仕事のことは他の誰よりも知っていますが、自分の担当以外の事はほとんど知りません。そういう人たちが何人集まっても、全体最適の議論にはならず、部分最適の主張、あるいはできない理由の説明などになりがちです。

私は社長も従業員も一緒に、現場で現物を前にしてワイワイガヤガヤと議論をすることによって、問題や課題を見つけ、カイゼンを実行して経営を良くするコンサルタントをしています。そしてそのためにはみんなが自分の持っている経験や能力をフルに活用して全体最適のアイディアを出し、みんなで協力してカイゼンを実行したいと思っています。そこで私はいつも次に説明する2つの方法を使ってこのことを実現しています。それが、KZ法とチョコ案です。

KZ Method

KZ法とは?

KZ法(K:カイゼン Z:全社)は正式名称を「現場・現物と全社的カイゼンを結びつける経営者参加型カイゼン技法」といい、「メーカーにおける会社全体の問題は現場現物に現れる」という考え方を基に、まず社長が先頭に立って、社員と一緒に3時間の現場活動を行います。それによって全社的な問題、例えば、製造の問題はもちろんのこと、設計、購買、営業、管理の問題といった経営全体の問題を顕在化させ、全員で現場現物を通じて、全社の問題を認識します。そしてその活動を1つの起爆剤として、全部門の壁を打ち破り、全社に高いモチベーションを起こして、全員で経営成果に直結する全社最適のカイゼンを行うものです。

例えば、生産活動で計画に対して遅れが出ると大きな問題になります。対策として、計画部門は事前に不良品の発生を見込んで、少し多めに生産計画を作ります。あるいは部品納入の遅れがあることを想定して、調達部門は早め多めに部品を購入します。その結果、生産計画は達成されますが、早め多めに買ったり作ったりしたため現場には在庫が増えるので、スペースがなくなりさらにキャッシュが減少します。

これらの問題の多くは製造現場で発生するので直接の対応は現場部門が行いますが、実はその背景に製造以外の多くのスタッフ部門が関係しています。作りにくい設計、設備故障、原材料のバラツキ、頻繁な計画変更、営業からの情報不足など、設計、技術、調達、管理、営業といったスタッフ部門の仕事が原因で不良が発生しています。しかしそれらは目に見えないので、早急な対策が取られないまま、放置されることも多いものです。しかしKZ法を実行することで、これらの隠れた問題が目に見える形で顕在化します。

KZ法には社長を筆頭に、役員、管理職、一般従業員の全職位の人が参加します。そして製造はもちろん設計、営業、管理、技術などの幅広い部門の代表が現場に集まり、そこで1月以内に使わないモノおよび問題のあるモノにカードを貼る活動から始まるわずか3時間の現場活動です。これによって会社の中にある問題や可能性を現場現物でみんなが具体的に見て理解することができます。そこからの発見で、全員で行うカイゼンの方向性を共有し、どのような協力体制が必要かを考えられるようになります。会社経営の話をするのにナゼ現場で活動?と思われるかもしれませんが、私は全社の問題の多くの部分が現場にあるモノに見えない形で潜んでいると考えています。それを皆でKZ法という現場活動で顕在化するのです。

私は長いコンサルタント経験の中からこのKZ法の原型にあたるカイゼン手法を作り出しました。当初は大きな成果が出ても、たまたま私とクライアントの会社との相性が良かったからと考えていました。しかしいろいろな条件の違いがあってもいつも大きな成果を出すことができたことから、この方法には何らかの法則性があるのではないかと考え、改めてこの方法が持つ特性を研究しました。その結果、KZ法には単なる相性によるものではなく、どこにも通用する原理原則があることを発見しました。そして私は2006年に慶應義塾大学からこのKZ法テーマにした論文で工学博士号を授与されました。

KZ Process

KZ法の進め方(概要)

01 - 参加者全員で、1人30枚程度のカードを、すぐに使わないモノ、あるいは問題と思われるモノに貼る。

02 - カードが貼られたモノを外へ出して “不要”“不急”“必要”に分類する。

03 - 問題(移動したモノの集まり)に対して原因と対策を全員で議論

04 - 不要物を廃却

05 - KZ法実行前

06 - KZ法実行後

07 - 空いたスペースを生産ライン化した
CHOKOAN

チョコ案とは

KZ法の実行により会社全体の問題が分かり、全部門の協力の下で全体最適のカイゼンが始まりますが、これだけでは十分ではありません。工程的な改善は、トップダウンで行うことができますが、個々の作業におけるやりにくさや大変さなどを隅々まできめ細かくカイゼンしようとすると、現場にいるすべての人のボトムアップによる直接的なカイゼン活動が必要になります。

「カイゼン提案制度」という仕組みは多くの企業に採用されていますが、提案内容についての細かい説明や効果金額の正確な把握が求められるなどハードルが高いうえ、必ずしも提案が実現するとは限らないという不確実性から、実績が低迷している現場も多く見られます。これでは従業員が持っているカイゼン能力が十分に活用されておらず、とってももったいないことだといえます。

そこで私は「チョコ案」という仕組みを使い、全従業員のカイゼン能力を引き出し、ボトムアップによるキメ細かいカイゼンが全社で実行されるようにしています。「チョコ案」は、カイゼン提案制度の様にアイデアを書くのではなく、全従業員がひと月に一件以上のカイゼンを実行して、その結果を紙に書いて提出するという仕組みです。また成果が大きい高レベルのカイゼンである必要がなく、棚の表示の追加や簡単な機械の修理、そして他の人が実行したカイゼンのマネでもいいという、気楽なカイゼンです。

カイゼン内容の書き方ですが、「改善提案制度」の場合はまだ実現していないことを書くので、正確で細かい記述が必要です。しかし「チョコ案」の場合は実行済のカイゼンの報告なので、用紙の記入は簡単に済ませられます。もし用紙を読んで内容が分からなければ現場に見に行けばいいのです。例にあるように「カイゼン前の状態」、「カイゼン後の状態」、「氏名」の3点だけでいいので、文章を書くのが苦手な人でも大丈夫です。外国人労働者で日本語が書けない人であった場合は母国語で書いても、あるいはカイゼン前と後の写真を撮って貼り付けてもOKです。

【記入用紙の例】

小さなカイゼンが多い「チョコ案」制度で大きな効果を出すためには、発表会を開くことが有効です。一つひとつは小さなカイゼンであっても、定期的に発表会を実施して、参加者間でその内容を共有すると、発表を聞いた人たちがそれと同じように実行したり、そこで気付いたアイデアから更なるカイゼンを生み出したりすることが起き、カイゼンスピードもレベルも上がっていきます。

従業員約200名のギフト用品を生産販売するA社では、社長を筆頭に全従業員がひと月に1件のカイゼンを実行し報告するチョコ案を実行しています。このカイゼンを1年間実行した結果、当初の目標は12 ヵ月で2500 件でしたが,なんと 10000 件を超えるカイゼンが実行されました。従業員はカイゼンを実行するたびに実績がグラフに書き足され、発表会において上司から褒められ、自分のカイゼンが仕事に反映されることを肌で感じることができモチベーションが向上しました。カイゼンを通じて会社に貢献し評価されたという気持ちが参加者の更なる自主的な行動に結びつき、アイデアの質が急速に向上したのです。

【目標を大幅に突破したグラフ】

どんなにたくさんのカイゼンを実行しても、一つひとつのカイゼンは小さいので大した効果は出ないだろう...と思った人もいましたが、当時最大の課題であった品質トラブルが5分の1に減り,在庫金額も1億円以上減少しました。それまでは退職者が多く採用が大変であったのですが、カイゼン実行で従業員間の協力関係が増えてくるとチームワークが生まれ、退職者が大幅に減り管理が楽になりました。会社的にカイゼンしようという大きな目標を掲げ,全従業員がそれぞれの立場からアイデアを出し、優れたアイデアは会社の意思決定に反映させる、このプロセスはボトムアップ型のカイゼンであり、その積み重ねの結果生まれたカイゼン力やアイデアが、さらに大きな成果に結びついたといえるでしょう。

製造部門の仕事は毎日計画通りにモノを作ることです。実際には設備故障や、材料納入遅れ、あるいは欠勤などの問題が日々起きており、それ自体は大変なことではありますが、結果として計画を達成することは当たり前であり、それによって各個人が褒められることはあまりありません。しかしカイゼンを実行することが仕事の一部として設定されると製造部門の各従業員はカイゼン実行を通じて上司に評価されることとなり、会話も増え自分に求められていることも分かり、すべての人が自ら考えて行動する実行力を身に付けます。そして同じ会社に所属するいろいろな判断力や能力を持った人が1つの方向に向かってそれぞれの人の能力や役割に合ったカイゼンを実行することで経営を変えることができるようになるのです。

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